【大紀元日本3月4日】北京五輪開催中の水供給を確保し、汚染した川と湖を浄化して国際社会にきれいな環境を提供しようと、北京市当局は周辺地区の農民の用水を調達したり、北京市に水を運ぶ水利プロジェクトを急いでいる。しかし、専門家からは環境への影響や、実効性を疑問視する声が多く上がっている。
中国では、1999年以来の降雨量は平均値にならず、国民一人当たりの水源は世界平均値の1/30、イスラエルよりも低い。渇水問題は徐々に深刻になりつつある。
水問題を解決するために、中国当局が2002年に着工した大型の水利プロジェクト「南水北調(なんすいほくちょう)」は、中国南部地域の水を北部地域に送り込む運河を作り、慢性的な水不足を解消するための構想であり、総投資額は約5,000億元(約8兆5千億円)。オリンピック開催期間中に、北京の水供給を確保するために、当局はその第一期工事を急ぎ、今年4月までに、隣接する河北省の4つのダムから3億立方メートル以上の水を調達しようとしている。
米誌「ナショナル・ジオグラフィック」が2月28日にサイトで伝えたところによると、北京市と東部の各ダム、河川、運河との連結作業が終了したという。これにより、黄河の1億5千万立方メートルの水が、三省に伸びる運河網を通して引かれ、北京南部の干ばつの影響を受けた湖を満たすことができる。また、同時に行われている水利プロジェクトとして、北京五輪のセーリング競技が開かれる予定の青島東部海岸リゾート地への引水も行われている。
これらの計画は、三本の人口運河を使って中国南部から乾燥した北部へ水を引くという大規模水利プロジェクトのほんの前段階にすぎない。最終的には、毎年400億立方メートルの水を長江やその支流から水を引く計画である。
しかしながら、こうした計画は、貴重な水資源の恩恵を受けるものと、そうでないものとの間の紛争の火種となると指摘する専門家もいる。
米マサチューセッツ州アマーストの「世界治水政策プロジェクト(GWPP)」所長サンドラ・ポステル氏によると、2000年に「中国東部の黄河流域の農民数千人は、行政府が地域の生活用水のための貯水池の水を利用する計画を巡って、警察と衝突した」という。さらに、およそ30万人が水路移転のために住み慣れた土地を負われることになっているという。
北京市近郊北西部から113キロ離れた河北省の赤城県では、農民は毎日凍りついた井戸から2バケツの水を汲み取って、トウモロコシ畑に給水している。近くのダムの水は全部北京市に供給されるため、使用してはならないという。
当局からは一人当たり約30ドル相当の補償が支給されていると伝えられているが、一部の農民は受け取ってないと主張し、寒さの厳しい北部地域であるが、水不足により不作で経済事情が厳しいため、石炭を買えない農民は、畑に廃棄のトウモロコシの茎を燃料として暖を取っている。
専門家からは、過去50年間で北京市の地下水が過度に採取されてきたため、地下水の水面は76フィート(約23メートル)下降したという。
フィナンシャル・タイムズ紙の2月27日の報道では、中国当局の高級幹部、「中国人民政治協商会議陝西省委員会」の委員長である安啓元氏の発言を報じた。同紙の取材に応じた安氏は厳しい口調で、北京市に水を運ぶ構想や、大型の水力発電計画は、北西部の農民数百万人の生活を脅かすと指摘し、北京当局に対し、五輪のための水資源提供を要求されている地方に補償を払うべきであるとした。
一方、北京市当局の幹部によると、汚染され臭気を発する市内の川、運河、湖の水を薄め、景観の良い環境を作るには、さらに約3億立方メートルの水が必要であるという。
南水北調の水利プロジェクトについて、発表当初から多くの論争を巻き起こした。
多くの専門家は、運河を造ることは短絡的なやり方と指摘、コンクリート造のダムと運河で水を運ぶのに、水の蒸発量が増える上、水の吸収不足によりすでにスカスカになった川底の陥落をさらに加速させると警告した。また、このプロジェクトには巨額の工事費がかかることや、約30万人以上の住民の家屋移転問題が生じることなどが挙げられ、供水量の少なかった場合の経済効果や、供水量の多かった場合、渇水期の長江の水不足、またそれに伴う長江河川における船舶航行への影響、長江河口の潮の塩分濃度の増加、さらに自然環境への影響なども懸念されている。
中国のチベットでの水利建設計画は、国境を越えた摩擦を引起す可能性も指摘されている。米オレゴン州立大学地理学のアーロン・ウルフ(Aaron Wolf)教授は、「チベット川下流のアジア諸国はすべて、中国の水利開発計画に憂慮を示している」と述べた。
(記者・田清、翻訳/編集・叶子)
(08/03/04 10:54)
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