中国が株式取引の印紙税率引き上げを打ち出したことで30日の東京株式市場は軟調な展開となったが、下げ幅も限定的でマーケットには安心感にも似た空気が漂っている。中国の株下落は一時的であり実体経済に影響を及ぼさないとみているためだ。
中国株が暴落した場合は日本市場に資金は流入せず「共倒れ」になるとの予想も多いが、これまで何度かあった「ミニ暴落」でも、その後すぐに高値を奪回する強さを見せ付けられているだけに、中国の株価抑制策の影響を現時点で深刻に受け止める向きは少ない。
<中国株下落は一時的との見方>
中国当局は30日、株式取引の印紙税率を現行の0.1%から0.3%に引き上げることを決定した。上海総合指数<.SSEC>は昨年1年間で130%急騰、今年も年初から62%値上がりし、29日も連日の最高値更新となっていた。今回の決定は、相場の過熱に対する政府の深い懸念を示しているという。
この措置を受け、まず反応したのは29日の米国株式市場。続伸したものの上値を抑え株価を圧迫した。午前10時半前に上海総合株価指数<.SSEC>が約5%下落して始まると日本の国内株もつれて下落。日経平均は中国株の動きに合わせるかのように上下した。
だが東京マーケットにパニック的な売りは出ず比較的冷静な相場展開となった。中国株下落は一時的との見方が多かったためだ。「取引量が減っているなかで先物の売りが現物に大きな影響を与えているというのが背景だ。悪い材料に抵抗力がなくなっている。ただコンマ数パーセントの税率引き上げで株の取引をやめるという中国人投資家は少ないだろう。中国株の影響は限定的とみている」(岡三証券・松本貴司証券情報部長)。
中国市場でも冷静な声が多い。1997年には、やはり過熱相場のクールダウンを目的に印紙税の税率が0.5%に引き上げられたが、今回の0.3%への引き上げはそれを下回っている。中国当局の「本気度」に疑問符が付くのも致し方ない。国泰君安証券のディレクター、Xu Yinhui氏は「株式市場への影響は大きくないはずだ。今回の措置で取引コストがかさむのは短期的な投機筋だけだ」と述べている。
<これまで見てきた中国株の強さに安心感>
中国株の下落が一時的ならば、円キャリートレードの巻き戻しなど世界的な投機マネーの収縮にはつながらず、世界経済のカギを握るまで成長した中国の実体経済にも影響は及ばないというわけだ。
中国株が急落しても出遅れていた魅力の乏しい日本株に資金が流入することはなく、ともに下落するとみるマーケット参加者は多いが、きょうの東京マーケットでは深刻な雰囲気はみられなかった。
2月下旬の急落後も1カ月も経たずに高値を取り戻し、グリーンスパン前米連邦準備理事会(FRB)議長が「ある時点で劇的な収縮」があるだろうと述べてもほとんど反応しなかった中国市場の強さを見ているためか、きょうの下落も一時的な調整のひとつとして受け止める向きが多かった。
ただ、もし「中国株が急落すれば、キャッシュフローに影響を受けた投資家のグローバル分散投資におけるリスク許容度が下がり、資金引き揚げのきっかけになる」(野村証券投資調査部チーフ・ストラテジストの岩澤誠一郎氏)とも言える。その場合には2月下旬に起きた世界同時株安が再び起きることになる。
さらに中国国内の株式取引口座が1億を上回った可能性があるなど、中国国民の株ブームは家計にも大きく組み込まれており、中国株下落は消費などを通じて実体経済に悪影響をもたらす可能性がある。 歴史上、中国のように資産価格と実体経済が同時に上昇するのは珍しいと三菱UFJ証券チーフエコノミストの水野和夫氏は指摘する。グローバル化以前の経済は国内の資金量が限られていたため、実体経済が上昇し、その後資産価格が上昇するといった経路をたどることが多かったという。中国は、その豊富な流動性から資産価格と実体経済が同時に上昇しており、資産価格の下落はスパイラル的な悪影響をもたらす可能性があると水野氏は指摘している。
[東京 30日 ロイター]
(07/05/31 09:05)
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